書籍・雑誌

2011年12月14日 (水)

『真の文明は人を殺さず』

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石原慎太郎都知事は、3.11の被害を「天罰」と表現した。私はそれを聞いて、1923(大正12)年の関東大震災のあとでも「天罰」「天譴(てんけん)」とする意見があいついだことを思い返した。しかし、何が「天罰」かと言いたい。東北出身の私には、心の奥深くに日本の近代化そのものに対するルサンチマンが渦巻いているのを否定することはできない。
(小松裕著『真の文明は人を殺さず』小学館 “はじめに”より一部抜粋)

本のタイトルは今から100年以上前、足尾銅山で鉱毒事件が発生した際にほとんど一人で古河鉱業と時の政府と闘ったことで知られる田中正造の言葉からとっている。
「真の文明は 人を殺さず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」
田中正造は「いのち」を中心に据えていることでこれを奪い軽視するものに対して鋭く対峙している。この鉱毒事件は日本の公害の原点ともいわれているが、その後も水俣病のチッソ、また今回の原発の東京電力と100年前田中正造が闘った時とその構図はまったく変わっていないに気付かされる。まさに憤まんやるかたない思いにさせられるが、一方で3.11以降を考える上で多くのヒントも得られる貴重な1冊であることは確か。

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2010年5月 7日 (金)

写真誌「deja-vu]

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写真誌「デジャ=ヴュ」の創刊は1990年、季刊で5年ほど発行されていた写真誌。飯沢耕太郎が編集長。アラーキーこと荒木経惟をたびたび特集するなどで、その“偏向ぶり”が読者や関係者の間で物議を交わしたこともあったそうな。しかし編集長とは本来そういったものだろう。偏向、偏愛するからこそ個性が出るというものだ。(コレって自分がアラーキー好きだからかな?)
定期購読していた当時はざっと目を通すくらいで本棚に押し込んだままになっていた。ちょうど20年を経過しているわけだが今読むと実に面白いのだ。
写真は「No.19 Spring 1995」の「バウハウスの写真」特集号。
このバウハウス特集の中で「山脇巌の生涯と作品」と題して川畑直道という人が、当時の日本人として初めてバウハウス留学をした(それも夫婦で)人物の足跡を追っているのが大変興味深い。バウハウスでの痛快とも言える生活や行動ぶりが紹介されているが、学校祭ともいえるフェストの当日、カンディンスキーからパウル・クレーを紹介される話など80年ほど前の日本人クリエイターの先駆者ならではの逸話にことかかない。帰国後は建築家としても活躍、札幌にゆかりのある三岸好太郎のアトリエなども建てたという。千田是也や島崎藤村の三男で画家の島崎蓊助も仲間というのも山脇巌の人となりを語っているようだ。
この「デジャ=ヴュ」誌、バックナンバーが20冊揃っている。これからまた何が目に飛び込んでくるやら楽しみだなぁ。

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2010年4月 9日 (金)

写真集「見よ、彼らの顔を 聴け、彼らの声を」

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著者はDavid Shever(デービット・シーバー)、現在妻子とロスアンゼルスに住む美術家で思索家と奥付にある。
開けて先ず最初にダライ・ラマ14世の推薦の辞が目に飛び込んでくる。
全文をここに紹介します。

『見よ、彼らの顔を 聴け、彼らの声を』には、中国支配によるチベットでの生活を直に体験した12人のチベット人のレポートと実話が掲載されています。彼ら彼女らの大半は、何も罪を犯していず、ただチベット人というだけの理由で、無情な処罰を受けました。しかし、それにもかかわらず、各人の記憶には怒りの感情はほとんどありません。これは私たちチベット人が固く守り抜いてきた文化と価値観の中核である慈悲の心の証であると言えます。この本を読まれる皆さんにも、きっと慈悲の心が宿ることでしょう。

中国政府のかれらチベット人に対する暴虐さは、折りにふれ報道などで目にしており、なぜ一国の人々の暮らしや文化をここまで弾圧という非道の限りをつくして抑え込まなければならないのか?と憤りをおぼえていた。この写真集は一人の人間が冷静にその事実をみつめ記録した貴重なもので、この現実に目をそらすことなく自分のこととして認めたいと感じた。しかし、ダライ・ラマ14世の言うようには慈悲の心にはとうてい至らず、むしろ怒りの思いがこみあげてくるのを抑えることのできなかったのも事実でした。ネットでの強い規制といい経済最優先ともいえる政策といい、この大国はいったいどこへ向かおうとしているのでしょうか?
折しも今日の「天声人語」は第二次世界大戦のさなかに起きた「カチンの森」事件にふれ、ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダの作品「カチンの森」は日本でも公開されていおり、歴史を次の世代に渡すのが使命、という気迫が映像に満ちている、ワイダ氏の思いに、「人間の歴史は虐げられた者の勝利を忍耐強く待っている」というインドの詩人タゴールの言葉が重なり合う、と述べている。まさにチベットの人々の虐げられた姿と重なる思いで、これからも続くであろう幾多の困難を乗り越えて真の勝利をかち得ることをを願わずにはいられない。

『見よ、彼らの顔を 聴け、彼らの声を』─亡命チベット人の肖像
発行:2009年10月17日
発行所:ブイツーソリューション
発売元:星雲社
定価:2,100+税

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2009年4月11日 (土)

旅する本

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brown books cafe」という本好きのオーナーがやっている素敵な喫茶店があります。札幌は円山の住宅地、迷路のような小道の奥にあって地図を片手にしても辿り着かない人もいるという“うれしい”店です。
ここで「ブッククロッシング中!」なるステッカーが貼られた本が目にとまりました。以前なにかでちらりと記事を見たような覚えもあるのですが、今回初めて実際の本に出合ったわけです。
この「BookCrossing」という“本に世界を旅させる活動”は2001年、アメリカのある夫妻によって始められ、現在の登録冊数は全世界で480万冊を超え、約68万人の会員から放たれた本が日本全国、世界各国を旅しているということです。
サイトから一部紹介します。

読み終わった本に、BCID番号を記入したステッカーを本に貼り、友達に渡したり、ベンチにおいてきたり、カフェに忘れてきたり。
本を手にした人が、本に書かれているBCID番号をBookCrossing.jpのウェブサイトで検索すると、どんな旅をしてきたかが分かります。
現在位置や本の感想(ジャーナル)をウェブサイトで報告して、また本を世界に解き放つ。 そして、本は旅を続けていく…。

ちょっと面白いですよね。一冊持ち帰ってきたので、また旅をさせるべくメンバー登録してみようと思います。

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2009年3月17日 (火)

雑誌「TOKYO FASION MAP with UNIQLO」

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17uniqlo2昨日、十年近く講師をしている専門学校の卒業式がありました。来賓の祝辞ではどなたもアメリカのサブプライムローンの破綻に端を発した未曾有の経済不況に触れられ、こういう厳しい時に船出する卒業生を激励されていたのが例年になく印象的でした。
式の後は祝賀会へと移り、そこで元気で晴れやかな学生諸君に接しいっとき憂いを忘れる思いでした。その後の二次会にも参加、余勢をかって三次会も出るという最近では滅多にない日となりました。
という訳でいささか二日酔いの態、唐突に話は変わります。
今月の初旬に新聞の小さな記事が目にとまりました。“ユニクロのパーカ132色の紹介”の見出しで雑誌の紹介記事です。「TOKYO FASION MAP with UNIQLO」で、東京に住む老若男女1000人がモデルになり、14種類132色のパーカをそれぞれのスタイルで紹介。税込みで480円。
「ユニクロ」はこの厳しい時代に順調に業績を伸ばしている希有な企業の一つですね。おおいにそそられて早速注文、入手しました。ここは商品開発に力を入れると同時にデザイン、ブランディング活動にも大いに力をいれている企業です。超売れっ子デザイナー佐藤可士和(さとうかしわ)氏がグラフィックを担当、インパクトのあるデザイン展開していることでもよく知られています。商品自体も「HeatTeck」という保温機能を持ったアンダーウエアがヒットしているようで、かく言う小生も愛用者の一人、厳寒期などは特に重宝しました。やはり伸びるところはしかるべきことをコツコツ努力を重ねているということでしょうか。

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2009年2月27日 (金)

方舟に積むものは

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最近「ジャケ買い」なる言葉が新聞をにぎわせている。26日付け朝日新聞の天声人語でも麻生首相の話の枕にふっていた。この言葉自体はかなり前からあって、LPレコードなどを購入の際中身はまったく知らなくてもジャケットデザインが魅力的で買ってしまった、という経験は誰もがお持ちのことだろう。
『方舟に積むものは』はFM番組で知り書店を巡って手に入れた。装丁が以前“ジャケ買い”したCD『TABLATURA』のデザインに雰囲気がよく似ている。よくよく見ると作者が同じだった。というささやかな嬉しいできごとを綴ってみました。

方舟に積むものはBook方舟に積むものは

著者:望月 通陽
販売元:筑摩書房
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